印刷しない本達
昔は出版するというと、どうしてもお金のかかるものでした。ですが今は、インターネットの普及に伴い、電子書籍が広まりました。電子書籍はペーパーレスですから、環境に優しく資源を無駄にしない大きなメリットがあります。モニターの高機能化、高解像度化で、ブラウン管モニターの時代に比較すれば、こうした電子書籍は驚くほど見やすく読みやすくもなりました。
出版する側のメリットとしては、在庫を抱えなくて済む、印刷しなくてかまわないのでコストが安く付くと、一見いいこと尽くめのように見えます。デメリットは、データ商品である以上コピーが簡単に作られてしまうという点です。購入する側のメリットは、電子書籍になっていればいつでもすぐに購入できる、パソコンに限らずさまざまな端末で、端末さえあれば重い本そのものを持ち運ぶことなく楽しめるという点です。また、保存する場所が少なくて済むというのも大きなメリットでしょう。ちなみに電子書籍は、アダルトジャンルの商品の販売も盛んで、売りやすいそうです。お店の人に顔を見られることなく購入できて、人に見られないように保管するのも簡単だということです。デメリットは、バックアップが取れない商品がほとんどだということ、昔は当たり前にあった、友人でほんの貸し借りをすることは難しいということです。
電子書籍が広まった背景は、ネット回線の高速化や、大容量デバイスの低価格化など、さまざまな要因のあるものですが、それを「必要としている人」がいたことがもちろん大きな理由です。印刷されてシ書店に出回る本は、採算ベースに乗せるために冒険的な出版はされない傾向があります。また、出版してから数年も経てば流通がなくなり、絶版となる本は数多く存在しています。ですが、電子書籍の登場で、「多くの人に手にとってもらえる本」だけではなく、「少数の人が手に入れたいと考えている本」の出版が可能になったのです。
昔は1000冊売れても、出版社も作者もほとんどお金にならなかったのですが、コストがかからない分、利益幅が大きくなり、少数汚売り上げでも十分素が取れるようになったのです。今の電子書籍市場は、一昔前の出版傾向とは異なるジャンルの本、これまで売れないといわれてきた本もどんどん出版できるようになったのです。
ですが、紙に印刷された本がなくなる日はまずやってこないといわれています。紙のほうが見やすい、紙の本のほうが所有欲を満たすことができるなど、紙の本を愛する人の理由はさまざまです。そして以外と、紙に印刷された本は保存性が高いものなのです。例えば和紙などは、保存状態がよければ1000年以上の寿命があるといわれています。寿命が短いといわれている酸性紙であっても、100年程度の寿命があります。それでは電子デバイスは、100年の寿命があるのでしょうか。電子書籍は著作権の問題もあり、バックアップが取れない商品がほとんどです。パソコンの買い換えや、ツールの買い替えで、お金を出して購入した本が読めなくなることも間々あります。また、最近は、数日から数ヶ月などの視聴期限付きの商品も多く出回っています。より出版の回転があがり、電子書籍を使い捨てメディアとして利用する人も増えてきているのです。そんな傾向がこれからも加速していけば、やはり電子書籍よりも紙の本を楽しみたいという人はむしろ電子書籍離れを起こす日もやってくるかも知れませんね。