写植って何のこと?
写植とは、写真植字の略です。今はパソコンで印刷の素となる文字を作っていますが、昔はこの写植を使って印刷する元になる文字を作っていました。写植の原理を簡単に説明すると、文字となる部分だけ、光るが通るように作られた黒きプレートを、プレートの光を当てて、一文字ずつ撮影します。光が通った文字の部分はその印画紙を現像すると黒く映し出されますよね。写植は、カメラを使って文字を映し出すという方法です。今ではほとんどがデジタル行程になり廃れてしまいましたが、昔は出版される本のほとんどが、この写植を使って文字を印刷していたという時代がありました。
写植は非常に優れた技術で、滑らかで美しいというのが特徴です。また、活字のように文字の大きさごとに活字を用意する必要はなく、カメラで文字の大きさを変更できますし、レンズを変更すれば斜体文字も作る事ができます。パソコンが今のようにHDもメモリも大きな容量を持っていなかった時代、数多くの日本の文字を、高解像度で出力できるようになったのは最近のことなのです。一昔前のデジカメは、アナログカメラに比べれば解像度が足りず、業務用の高解像度カメラは非常に高価なものでした。今でも手軽さという面では負けていますが、解像度の点ではアナログカメラは負けてはいません。といってもアナログカメラに解像度という観点はありませんので、あくまでもたとえではありますが、「きめ細かい画像」がデジタルよりアナログのほうが優れていたわけです。
現在ではほとんど廃れてしまったこの「写植」ですが、今もその写植文字を愛する人たちはいます。写植の全盛期にはデザイン性に優れた多くのフォントが出回っていました。ですがDTPに対応できる高解像度フォントとしてデータ化された、写植と同じフォントというのはまだ数が少なく、またフォントの単体販売もされてはいません。今後パソコンで使えるフォントとして販売される可能性もありますが、写植用のフォントを愛する人にとって、今は満足のいく状況にはありません。ですから、デザイナーなど、フォントにこだわる人は、写植文字で作られた文字を、スキャニングすることでデータ化して活用するケースも最近は多いようです。今は写植文字を作ってくれるところは減り続け、また写植文字を作る作業ができるオペレーターの数も減ってきています。ですが、写植という仕組みが廃れても、今もってその優れた文字は愛され続けているのです。