ちょっと知りたい、印刷のこと

活版印刷とは

 活版印刷は、昔からある印刷方法です。「活字」という言葉を聞いたことはないでしょうか。よく若者の活字離れなどというように、文字媒介を活字と表現する場合もありますが、もともと「活字」は、文字を指す言葉ではなく活版印刷に用いるもとになる、文字の彫られた印刷の材料の事です。
 活字は、素材はもちろん異なり金属で作られるのですが、ハンコのような仕組みで、凸状に刻まれた柱状の文字に、インキを付けて紙に押し付けて文字を印刷するという、シンプルな仕組みです。仕組みが単純な分、活字を使って印刷物を作る作業はアナログ的なものになります。活字は基本的に、ひとつに一文字しか刻まれていません。文章を作る場合は、大量にある文字の中から使う文字を探し出し、それを文章の通りに並べなおすという作業が必要になります。アルファベットであれば簡単なのですが、日本語となると活字を探し出すだけでも大変なのです。しかも、活字は文字のサイズごとに別のものが必要となります。例えば文庫本一冊分の文章を、活字を使って印刷するとなると、膨大な作業量が発生するということになります。
 現在はパソコンを使って、誰でも簡単に文字の入力ができますが、この活字を使う活版印刷は、「文字を探す」という作業が必要な、職人的なものになるのです。また、活字はアナログ的な手法で印刷しますから、使っているうちに欠けたりかすれたりとだんだん劣化してきます。使えなくなった活字は新しく作りなおさなければいけません。パソコンを使って、プリンターから印刷するという手軽さを見慣れている現代人から見れば、気の遠くなるような手間隙がかかる印刷方法ということになるでしょう。
 ですが、最近はそのアナログさが逆に好まれ、あえて活字を利用するケースもあります。一時は活字そのものの需要の低下で、活字印刷そのものが廃れていましたが、その味のある表現力は決してなくなりはしません。活字を作るメーカーもほとんどなくなりましたが、今はコンピューターを使って、「活字」の代わりとなる凸版を作る事も可能です。もちろん大量の文字を組むのはとても大変は作業になりますから、現在は名刺やカード類など、少量の文字を使うものが主流になっています。

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